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なぜ負荷運転が必要?義務化の背景と「動かない発電機」の現実
非常用発電機は「非常時に動くこと」が役割ですが、実際に災害が起きた際、
“エンジンは回ったのに発電していなかった”
というケースが全国で報告されています。
これが、負荷運転が求められるようになった最も大きな理由です。
今回はカラ運転(無負荷運転)との違い、背景、担当者が押さえるべきポイントを整理します。
1.「カラ運転点検」だけでは不十分だった
これまで多くの建物では、非常用発電機の点検として
エンジンを空回しするだけの無負荷点検が中心でした。
問題はココ!
カラ運転=”エンジンが動くかの確認”であり“発電できるか”の確認ではない
つまり、
・エンジン:OK
・発電部分(交流発電機):NG
・ケーブルや切替盤:NG
…で、あったとしても、カラ運転では気づけません。
実際、火災や大規模停電時に、
「試験では動いたのに、停電時は電気が送れなかった」
というトラブルが複数報告されました。
2.負荷運転とは?
負荷運転(発電試験)は、実際に電気を使う状態を再現し、
発電機に負荷(=負担・電力)をかけて動作確認する点検方法。
つまり、実践同等の試験です。
◆カラ運転と負荷運転の違い
カラ運転(無負荷試験)
・確認できること:エンジンが回るか
・弱点:発電能力はわからない
・比較的短時間、コスト低い
例えるなら、アクセルを踏まずに“アイドリング”だけしている車
負荷運転試験
・確認できること:発電できるか、供給できるか
・本来の目的に直結
・燃料や排煙対策が必要
例えるなら、道路を走ってブレーキや加速も含めて「車として使う」状態
3.義務化が強まった背景
負荷運転の必要性が強く言われるようになった理由は、次の3点です。
✓災害時に「動かない発電機」が多かった
東日本大震災や大型台風で、「年に1度点検していたのに動かなかった」
という報告が消防庁へ多数寄せられました。
✓カラ運転点検だけでは故障傾向が分からなかった
特に多い不具合は…
・バッテリー劣化
・燃料劣化
・バルブ固着
・劣化した発電部の絶縁不良
これらは負荷をかけないと発見できません。
✓消防庁通達で「負荷または代替手段」が明確化
2018年より、負荷運転または負荷に相当する試験(例:可搬式負荷装置・代替試験)
が求められる流れとなりました。
4.どれくらいの頻度で必要?
以前は年1回の負荷試験が必須でしたが、
法改正により条件によって実施周期が変わります。
●予防的な保全策を実施している場合(例:冷却水・潤滑油の交換、定期整備など)
⇒負荷試験は6年に1回でOK
または内部観察などの代替措置でも可
●予防的な保全策を実施していない場合
⇒従来通り年1回の負荷試験または内部観察などの代替措置が必須
5.担当者が押さえるべきポイント
チェック用に一覧化しました。
・☐点検方式(予防的な保全策/負荷/代替試験)が決まっている
・☐次回の負荷運転予定年が把握できている
・☐記録が残っており、引き継ぎできる状態
・☐負荷運転に伴う排煙・騒音・燃料消費の理解
・☐発電機本体だけでなく切替盤・制御盤まで動作確認できている
特に切替盤が動かず電力が建物に送れないというトラブルは多く、
大事な確認ポイントです。
まとめ.“動く”ではなく“供給できる”が重要
・カラ運転=動くかの確認
・負荷運転=役割を果たせるかの確認
非常用発電機は、いざという時に動かない=意味がない設備です。
だからこそ、定期的な負荷試験が必要、という考え方が広まっています。
設備管理は建物と同じく継続性が命です。
もしご不明点や不安があれば、ボントン株式会社へどうぞお気軽にお声がけください。
